4.《ネタバレ》 大好きな一本。今まで何度も見直していますが、年を取るとともに、見方がどんどん変わっていく作品です。20代の頃は、ウィリアム・ハートの優柔不断さにいらいらし、ジーナ・デイビスがエキセントリックな変な女に見えて、ラストには本当に不満が残りました。30代前半の頃には、キャスリン・ターナーとの、よりが戻るかと思ったらすぐに口げんかになるシーンが気になり、ああ、どこの夫婦も同じなのね、何とかここをうまく乗り切れなかったのかしら、とメーコンとサラの夫婦のあり方に注目してしまったり。30代も半ばを過ぎた今、ついさっきスカパーで再びこの映画を観たのですが、ふと、メーコンにはミュリエルでなければ、と思える自分がいる事に気づきました。メーコンは息子を事件で亡くした事で深く深く傷ついているのに、その息子の母親で、自分の妻であるサラにさえも、その辛さを素直に出せず、殻に閉じこもるしかなかった。その彼が出会って数日で、自ら殻を自然に破って心情を吐露できたのが、ミュリエルだったんですよね。それまで派手な化粧と服装だった彼女が、化粧っ気の無い顔でただただメーコンを抱きしめる姿は、どこか聖母の様に見えて、ジワンジワンきてしまいました。だけどメーコンがその事実に気づくのには時間がかかってしまい、ついつい18年も夫婦でいたサラとよりを戻そうとする。その優柔不断さが人間くさくて、そのリアルさに感情移入してしまいました。20代の頃はあんなに嫌いな部分だったのに、どうした私!ああ、年をとるってこういう事なのね…、こういう映画がわかるようになるなら、年とるのもいいかな、なんて思わせてくれる一本です。また、人生を旅行になぞらえて、シーンのところどころに入るガイドブックの一節も的を得ていてよかったです。こういう地味だけど、人間の機微を細かくとらえた映画が、またこれからも出てきてくれると嬉しいですね。