3.《ネタバレ》 マザコンの凶悪犯、息子以上の凶悪母、隙あらば寝首を掻こうとする子分、いびきで登場するヴァンプ等、ブッとんだ悪党どもが物語を彩る。捜査側はその分抑え気味の描き方。主人公コーディの性格は、母親への偏愛ぶりに加えて「高ぶった感情をコントロールしがたい人物」として秀逸なキャラ設定。頭痛持ちの描写はやや単調な印象だが。
セミ・ドキュメンタリータッチのギャング映画として、破滅型人間の生き様をスピーディにテンポよく演出。さりげない場面にも綿密な計算が行き届いた脚本だ。
一例として・・・捜査官ファロンが囚人を装って刑務所に潜入する際、事前に「妻は金髪」という設定を要望→刑務所に茶髪の写真が送られる→コーディが彼を疑って写真を封筒から取出し飾っておく→刑務所に入ったファロンが妻(に扮した偽者)の写真と気づかない→コーディが「独房で視力が落ちたな」とかまをかける→ファロン写真に気付き咄嗟に「金髪を茶色に染めやがって」と罠をかわす→コーディ「小細工はきかないな」・・・両者の駆け引きが面白い。
他にも予防接種の緊迫感、読唇術の活用、ファロンと妻役との面会時の会話、当時のハイテクを駆使した捜査、ラストの化学工場の炎上など、ヤマ場をいくつも用意して飽きさせない。
J・キャグニーは“世界一になってやる”直情的なギャングを名演。後に「夜空の大空港」(傑作!)でクセのある犯人を演じるE・オブライエンが、本作では細心かつ大胆な潜入捜査官を見事に演じた。