9.《ネタバレ》 オリバー・ストーンなら、プラトーンよりも断然こちらの方を薦める。それほどの映画。
前半はすこし冗長だが、いきなりの死体の山には驚いた。
有無を言わさず殺していく軍隊。そしてそれを支援するアメリカ・・・
仲間が次々死んでいき、最後に妻と引き離されてしまうのは、ハッピーエンドを予想させる展開を裏切っていてよかったと思う。
なんというのか、戦争の痛烈さを感じさせられる。
ただ、一歩冷静に考えると、少し一面的かな、と。
無論アメリカの政策は大問題なんだけど、じゃあ共産主義でいいのかと言うと、結局共産主義も似たような弾圧をやっているのだから、どっちもどっちとしか思えない。
エルサルバドルの場合、市民への宣伝は左翼・共産主義の側の方がうまく行ったようだから、左が市民を取り込み、「市民を弾圧する右翼/市民を守る左翼」のような構図が出来上がってしまうが、結局は右も左も市民を食い物にしているのが現実だろう。
そういう意味では、共産主義サイドが市民を食い物にしていく側面も映したほうが、よりよかったのではなかろうか。
そういえば最近チベットで中国による弾圧が行われている。
普段、「平和」や「人権」を訴える「良心的」なメディアや知識人が、チベットの問題ではだんまりを決め込んでいる。
中国によるメディア統制が行われているのは事実だが、それにしてもあまり報じられていない。
自民党も民主党も、チベット問題には触れたがっていない。
ところで、毎年莫大なODAを中国にあげているのは日本だということは自覚しておいた方がいいのではなかろうか。
そして、そのODAが一体何に使われているのかも。
さらにいえば、そうしたODAを強く主張していたのは、ほかでもな「平和」や「人権」が大事な「良心的」なメディアや知識人であったことも。
日本の「良心的」なメディアや知識人、政治家は、もはやチベットでの弾圧を、この映画のアメリカのように支援しているようなものだろう。
この映画のような果敢なジャーナリストはいなくなってしまったのだろうか。