12.《ネタバレ》 ダルトン・トランボ自らの小説「ジョニーは銃を取った」の映画化。
オープニングのドラムの連打。
まるで機銃を掃射するように一つ一つ叩かれる音は、機銃に斃れていく兵士の叫びでもあるのかも知れない。
トランボの戦争に対するあらゆる怒りがこの映画には詰まっている。
戦争が起こる度に原作小説を発禁にしてきたアメリカ政府の傲慢。
「人間」として殺され、消耗品の「弾丸」という兵士にされていく人々。
戦争そのものに殺されていった人々の叫びをトランボは聞いたのかも知れない。
原作は第二次大戦が勃発した1939年。
まだ第一次大戦の暗い影を引きづっているような時代に続けざまの戦争。
第一次の頃に子供だった人間が、大人になった途端に戦場に出され殺されに行く。
何処にいたって戦場だ。子供も大人もみんな無差別に焼かれる。
戦争したけりゃてめえらだけでやれ。どうしてこんな争いのために我々が殺し殺されねばならんのだ。
顔を焼かれ四肢をもがれた「ジョニー」からはそんな激しい怒りが伝わって来る。
美しき過去の「幻想」、光の届かない闇の「現実」。
戦場に行けば二度と戻れないかもしれない。だったら死ぬ前に好きな人を思いっきり抱きしめてやりたい・・・。
叫びたくても叫べない、
触りたくても触れない、
泣きたくても泣けない、
眼をつぶりたくてもつぶる眼も無い。
こんな人間を誰が作った!
「ジョニーよ、銃を取れ」と無責任に叫んだ全ての人々だ。
自分の利益のために他人の死体を踏みつけにしてきた多くの人間だ。
トランボはそんな人間への怒りを命懸けで叫んだ。
何が赤狩りだ。
何がプロパガンダだ。
ジョニーの気持ちを否定できる奴なんざこの世にいない。
何故ならジョニーの苦しみはジョニーにしか解らないのだから。
我々はジョニーのありのままを受け止め考える事しかできないのだから。