15.《ネタバレ》 「完全版」の出来が満足(10)点だったので、コッチはほぼ満足(9)点を付けておく。
「ワイルドバンチ」は執拗なスローモーション&クローズアップ演出で反吐が出る映画だったが、本作はそれを極力抑えたことで見事な傑作となった。
「昼下がりの決斗」と共にペキンパーを見直した映画。
リアルな戦場と言えばルイス・マイルストンの「西部戦線異状なし」もあるが、どちらかと言えば俺は「戦争のはらわた」を選ぶ。
第二次世界大戦の東部戦線を舞台としたこの映画は、ウィリー・ハインリッヒの原作「Willing Flesh」を元に映画化。
オープニングの子供の童謡をバッグにした戦争資料のような映像、
そして冒頭のシュタイナー小隊の華々しい活躍。
死と破壊に満ちた戦場、その下に拡がる塹壕の中に溢れる人間の温もり・・・やがてそれも消えていく。
シュタイナーが助けたロシア人捕虜の少年が良い例だ。
アンドレイ・タルコフスキー監督の「僕の村は戦場だった」を思い出すその子供。
死が待つだけの戦場で生まれる言語を超えた友情・・・それすらも打ち砕かれていく。
兵士は国の道具なのか?
一人の人間なのか?
そんな様を死が飛び交う戦場、ドイツ軍の一部隊の視点で描いていく。
勲章一つのために多くの人間が死んでいく。
「こんな物」のために・・・主人公はそれに気付いてしまったのだ。
そして戦うことの意味を求めて苦悩と葛藤を繰り返す。
上司であるシュトランスキーとの闘争。
内も外も疑心暗鬼で敵だらけ。
取り返しのつかない死があるとも知らずに彼らは争う。
そんな男たちも、いざ死ぬとなると人間としての尊厳を取り戻す。
シュタイナーも、ブランド大佐も、シュトランスキーも輝きに満ちた顔で戦場に飛び出していった。
彼らの最期は解らないが、そこには命懸けで戦った人々の物語が強く刻まれている。
シュタイナーが笑ったのはシュトランスキーの滑稽さか、戦争そのものの滑稽さか。
その答えはシュタイナーだけが知っている。