2.《ネタバレ》 現代人には心臓に悪い映画でした。
脚本、演出など完成度が高い。
序盤、家族の中ではお父さんはいてもいなくても同じような存在。
だから構図でもあえて何かお父さんがモノで遮られて、映画を観る人にとっては
お父さんが構図的にも"人物扱いされていない"印象を与えられるのです。
そういう上手い演出、構図が多くみられ、監督のこだわりが見受けられます。
点数が9点なのは笑いを誘うシーンについてなんですが、
ブラックな笑いと、何かこう、ただ場面と場面とのつなぎ合わせるために
あるような意味のない笑いのシーンがあったんですが
ブラックな笑いは(たとえば失業仲間が携帯電話の嘘で電話をうけとるシーンやその人の家へご飯を食べに行くシーン)最初クスっと笑え、後に何かすごく虚しい思いをする演出としていいのですが、つなぎ合わせようのような笑い(たとえば強盗がバカをして顔を見られるシーンなどなど)は正直蛇足。
むしろ笑いのシーンはこの映画には極力少なめにすべきだったと思う。
入れるとしても上に書いてるようにブラックなやつだけにすべき。
しかし、こんなにも暗い映画がラストにかけて家族が再生していく様を描ききっているところは高評価できる。ラストシーンではあんなけ「一度言ったことは容易に覆すことはできない。これは親の権威にかかわる。」なんて言ってたお父さんが、ドビュッシーの『月の光』を見事に演奏する息子の権威で画面を去っていくのは強烈な大人世代への皮肉のパンチがきいていて素晴らしい。
やはりこの映画の救いは、息子がピアノをやめなかったこと。
映画のように大人たちが保守的に馬鹿なことやってると若い世代が不幸になるんだなと実感。
嘘、すれ違う人間関係、保守的な大人達のガラスのようなもろい権威で奏でられるトウキョウソナタ。その悲しいトウキョウソナタを、現代を生きる若い世代は映画の『月の光』のように綺麗に奏でられるのだろうか。