1.《ネタバレ》 哀しい話だが、とても素敵な映画だ。セリフが一切ないのに、映像だけで総てが伝わってくる。
正直この作品を見るまで、手塚治虫をナメ腐っていた時期があった(中学生の頃)。だが、試しに見てみたこの作品で意識を改めた。漫画だけでなく、アニメでもこんな凄いのを残したのか・・・!と。やっぱり手塚治虫は凄い。この作品はもっと多くの人に見てもらいたい。
戦争の足音が迫るヨーロッパのとある街角。街灯が暗い路地を照らし、ポスターの中で静かな演奏を続けるヴァイオリニストとピアニストの淡い恋。空間で遮断された二人は、そこから抜け出して手を取り合うことも、愛し合う事もできない。
屋根裏部屋に住む女の子、その子が大事にしているクマのぬいぐるみは落ち、それをイタズラ好きのネズミが見つける。
恋人たちの穏やかな日々。直接手を取り合えなくとも、こうして見詰め合っているだけで、それだけで良かった。
それを引き裂くように戦争は激化していく。独裁者のポスターが嘲笑い、脅かす。
やがて戦火が街を包むが、皮肉にもその焔が恋人たちを結びつけ、空高く誘うのである。