3.“バレリーナ”という人種をカテゴライズするならば、「芸術家」と「アスリート」どちらが適切か?
「バレエ」というものをまともに観たことは無いが、それに関する物語や、実在のバレリーナのドキュメンタリーを見る度に、そのカテゴライズに戸惑う。
一流のスポーツシーンを観たときに感じる芸術性を踏まえれば、「バレエ」という表現は、「芸術」と「スポーツ」それぞれの究極が重なり合う領域に存在するものなのだろうと思う。
そして、「芸術」と「スポーツ」その両方を愛するからこそ敢えて言いたい。“両者”が行き着く先は、果てしない「自己満足」の世界だということを。
詰まりは、「バレエ」という“表現”の到達点は、究極の「自己満足」であり、「自己陶酔」だ。
だからこそ、その「究極」を追い求める過程において、精神世界の屈折、そして自我の崩壊は、往々にして避けられない。
そういうことこそが、この“異質”な映画が描き出す本質だろうと思う。
ひたすらに純粋で無垢な欲望を追い求める主人公の望みが叶った瞬間、自らが抱える闇が蠢き始める。
そこには、芸術と肉体が融合した「バレエ」という表現の特異性と、バレリーナという生き方における破滅的な精神世界が入り交じり、言葉にし難い「混沌」が映し出される。
究極の「完璧」を追い求め、次第に“崩壊”していく主人公。
自分を取り巻くすべてのものを傷つけ、嘆き、その“ダメージ”がすべて自らに向けられたものだと知った時、彼女が見たものは何だったのか。
とても、色々な捉え方が出来る映画だと思う。
目が離せないシーン、とても観ていられないシーン、それぞれが連続して波打つように展開する。決して心地の良い映画ではない。
ただ、振り返ると、様々なシーンが脳裏に浮かんでは消え、その時々の主人公の心情に思いを巡らしていることに気づく。
「どういうジャンルの映画か?」と問われると、返答に非常に困る作品であるが、観る者それぞれの心理に直接訴えかけるような“一筋縄ではいかない”映画であることは間違いない。
儚さ、脆さ、危うさ、愚かしさ、そして悍ましいまでの恐ろしさ。それらすべてを包括した主演女優の美しさに圧倒された。
「レオン」から16年、よくもまあ凄い女優に成ったと思う。素晴らしい。