1.《ネタバレ》 深く心に残る映画になりそうです。淡々と描かれていますところでも心境の変化が大変わかりやすく想像できました。
訴訟する・しない、この仕事一本に専念する・しない、絵をオーストリアに残す・残さないなどの葛藤は私にはよく理解できたつもりです。
特に代理人についてですが、曾祖父の名前が刻まれたホロコースト記念碑に触れたら、祖父作曲のコンサートがあったら、そりゃあ、暮らしていなくても自分のルーツはここ(ウィーン)にあると思うのは当然で、その国を追われなけれいけなかったこと、絵画が強奪されたことについてまずは国に非を認めてもらいたい、と邪念なく訴えたのが功を奏したのではないでしょうか。
また、黄金の肖像画が奇跡的に残っていることが非常に感慨深い。いくつか思ったことをメモリました。
1.クリムトはほとんどの場合、発注を受けてからしか作品に取り掛からない→アデーレの肖像画は3-4年かかった大作で、所有権がはっきりしていた。
2.マリアの家系は銀行家、大の富裕層だから出国できた。
3.弁護士の家系もまた著名な音楽家で奇跡的にアメリカに渡れた。
4.オーストリアで訴訟を起こす場合の供託金が普通は絶対に払えない額(門前払い)
5.マリアが提訴したのは82歳、勝訴は90歳でした。(普通なら訴訟をあきらめていた年齢か)
6.強奪された作品を残した審美眼に一応は脱帽(他の国の大革命などではほとんどの文化財が損なわれ、現在に残っていない事実などを鑑みて)
7.ストラディバリウスは戻らないだろう。
8.エスティー・ローダー社が破格な値段でこの絵の価値を世界に知らしめた(当時156億円以上)
9.余談:個人的に裁判所の役人が「オーストリアね、コアラ!」のくだりがなんだかこのとんでもないCaseの始まりを面白くしてくれたと思っている。