11.《ネタバレ》 第一次大戦の戦場を描いたキューブリックの傑作。
前半は戦場での死闘、後半は組織の腐敗や戦争そのものの不条理を描いていく。
冒頭は二人の将校の会話からはじまる。
そこから塹壕で戦う兵士を視察しに出掛ける。
「やあ、ドイツ兵を殺す覚悟はできているか兵士諸君?」
「椅子に座った奴などに戦いを理解できんよ。 “机上”で戦う奴にもだ」
言っている事はご立派、だが実際は現場の事情を知らずに味方を発砲しようとするようなクソ司令官だ。
突撃前の偵察任務。ピストル一つで敵が潜むかも知れない陣地に近づく緊張感みなぎる場面。照明弾の不気味さ、上官はビビッてトンズラ、味方に殺されるこの不条理よ!
さっきまで本音で口論していた二人、上官がきたら建前を通さなきゃならない。
突撃作戦時の戦慄。敵のアリ塚をブン奪るために今日も名も無き兵士が死んでいく。
カーク・ダグラス率いる部隊が突っ込んでいく姿は胸が躍る場面でもあるが、同時に事態は急変する。
それにしたってロジェのクソ野郎めっ!
こういう奴ほど長生きしやがる。
裁くべき人間を間違えた軍法会議、くじびきで選ばれた“殺される”人間・・・余りに不当だ。
だいたい、どうして敵の陣地を奪ってもいないのに自分の兵士をむざむざ殺さねばならんのだ。
連帯責任の前に、本当の原因を何故追究しようとしないのだろうか。そんな世の中総ての理不尽さを見せ付けられているようだ。
組織が個人を殺す事の残酷さ。爆弾一つで何百人も殺すのと、違うとは言わせない。
死にゆく男たちは最後まで抵抗し、ハラを決めて散っていく。
やり場のない怒り・・・司令官の座を降ろされるくらいで済むと思うなよ。
だが、責任を擦り付け合う奴だけが軍隊じゃない。ルソー大尉みたいな“漢”たちも生き残り、また死んでいくのだ。
酒場で歌う女の歌が、彼らのせめてもの慰めなのだろう。
そして生き残った男たちはまた戦場へと進んでいく・・・。