1.《ネタバレ》 好きな人に近付く為には手段を選ばない。目的遂行の為には何をしても許されると思っている超自己中心的肉食系女子。
それがこの物語の主人公、木村愛だ。
好きな男の子に付き合っている彼女が居ればフツーあきらめません?
しかし、愛ちゃんは全く引き下がらないばかりか、好きな男の子の机やロッカーを漁る為には夜の学校に忍び込む事も厭わない、正に行動力の化身。
かくして愛ちゃんは好きな人(たとえ君)のロッカーからある手紙を見つけてそれを持って帰ってしまう。それは実はたとえ君に宛てた美雪という人物からの恋文であった。
いてもたっても居られなくなった愛は美雪に接近し、友達が欲しいという彼女の願いを叶えるために友達になり、さらにはもっと深い関係になって行くのだった。
それはたとえ君に振られた事の腹いせともいえる行為であったが、美雪の方も何故か愛を好きになり、そこから複雑極まりない学校生活を送っていく事となる。
最初はあくまでたとえ君の恋人を寝取るという行為であり、内心は同性に嫌悪感を抱いていたはずだが、次第にその気持ちにも変化が生じて行く。小説ではその辺の心境の微妙な移り変わりが繊細に描かれていてとても引き込まれたが、果たして映像ではちゃんと表現出来ているのか?と思っていた所、これが素晴らしい演技によって上手く表現されていたので素晴らしかった。
基本的には主人公の愛は最低の奴である。地道に陰で愛を育む2人の純情な関係に入り込む余地など無いのに無理矢理割って入り、厚顔無恥かつ卑劣な手段で二人の気持ちを掻き乱して行く。現実で側に居たら絶対に嫌な奴だが、フィクションだし他人事として見る分には実に面白いのだから困ったもんである。
そんなとんでもない主人公を演じた山田杏奈の演技力が凄かった!
好きな男子を見るときの獲物を狙うような鋭い目力が素晴らしい。
また、結構大胆な濡れ場もあるのだが、邦画にしては逃げずに描いていたので良かったかな。そこを省略してしまうと全く原作の本質が無くなってしまっていただけに、ちゃんと分かっているなと感じられとても良かった。この作品を映画化する為に監督になったというのは本当なんだな。
原作には無いシーンで良かったのはカラオケの場面。2人の立場の違いがより明確になっていたしあいみょんの「ふたりの世界」がとても印象に残る。
もう一つ特に好きなシーンは最後に愛がフラフラと美雪と一緒にたとえ君の家に行くシーン。
もはや完全に拒絶され、悪者となっている状態なのにもう惰性で向かっている感じがなんか憐れだし、そこでたとえ君の父親を殴るという大仕事をやってのけるのが最高だ。
しかもその後、ちょっとやってやった感を出して2人に説教してるのも笑えるし、あれだけの最低な奴を許してしまえる2人もまた優し過ぎて泣いた。
最後に、結末が原作の途中で終わっていて(殆ど最後に近いけど)、最初はそこで切っちゃうと意味変わってこない?って思ったけど、色々想像出来るしあれで良かったのかなと思い始めて来た。また何より監督のフィルモグラフィーに秘密があったのを発見。最後の台詞と同じタイトルの映画があるじゃん!