3.テレビや映画が受け身一方なのに対し演劇はまったく違う。役者の息づかいが観客に伝わり、観客の笑いや感動がまた役者に伝わる、俗に言う舞台と観客席の一体化である。その他にも演劇ならではのものは多々あろう。しかしそういったものは演劇を見た者でなければ感じ取ることができない特別なものだ。この松尾村のような田舎ではまったくの未知の世界。おもしろいかどうかもわからないし、採算が取れるかどうかもわからない。そもそもどれだけの人が見に来てくれるかもわからない、二の足を踏むのは当然のことである。そうした松尾村青年団を相手に、熱く誠実に説いて回る倍賞千惠子の河野さん熱意、なんとすばしいことか。団長の心を動かしそして青年団の一人一人に伝わっていく感動の物語だ。これがまた実話をもとにしているからなおすばらしい。私個人としては河野さんの他には青年団長を密かに慕い影ながら支えた岡本茉利演じる愛子さんに拍手を送りたい。