3.《ネタバレ》 111分のブルーレイ完全修復版。同仕様のDVDとほぼ同一だがランタイムは5分長い。
再見するとよく解るが、チャールトン・ヘストンのカバンの中の銃だとか、
大柄の杖だとか、モーテルでのうずまき状のスピーカーだとか、
後にキーアイテムとなってくる小道具はいずれもその前段で抜かりなくさりげなく
仄めかされている緻密さに改めて感心する。
(車両爆発直前までを捉えた)冒頭シーンばかりが注目される長回しも、
映画中盤のシーンでいかに効果的に用いられているかがよくわかる。
オーソン・ウェルズらがダイナマイトの証拠捏造を行う屋内シーンだが、
最初の長回しでオフ空間の浴室を移動によってまず映画的アリバイとして見せ、
二度目の長回しでそのオフ空間を観客により意識させてサスペンスを高める
という趣向になっている。
冒頭のそればかりが騒がれるのは、観客を映画へ一気に引き込むべき手段としての
派手な移動撮影の突出があるからだが、中盤のそれは複数の俳優の芝居の
緊張を持続させるためのものであり、その意味で観客にカメラを意識させない中で
ヘストンとウェルズの関係性の決定的変化を捉えるこちらの地味な長回しも
相当に難度の高いものであり、決して無視されるべきではない。
夜の闇の中、盗聴を移動という動きの中で描写する。
そしてそこに橋梁や油田ポンプの空間構造を
利用して障害を採り入れてサスペンスを醸成する。
やはり映画的センスとしか言い様がない。