13.《ネタバレ》 ルイ・マルの自伝的要素がこもった傑作。
この映画は、銃弾を1発も撃つことなく戦争の悲劇を伝える。
電車、駅、別れの挨拶を交わす母と子。クリスマス休暇を終えて寄宿学校に戻っていく子供の姿から、この映画は始まる。
学校では、人々の合唱が校内を包む。
寝静まる前のベッド、子供たちは新しい生徒への“挨拶”も忘れない。
窓の外で睨みを効かす軍人が、戦争を静かに物語る。
竹馬での遊び、空襲警報が続く中も防空壕で勉強を続ける熱心な教師。爆撃音が遠くで響く様子が怖い。
ピアノのレッスンでは、美しい女性が優しく教えてくれる。
空襲が続こうとも、ピアノの音色は度々響き渡る。
時々出入りする若い軍人たちもまた、寄宿生と年齢が少ししか違わない“子供”たちでもあるのだ。
森の中でのおにごっこは、まるで戦場を行くように描写される。今軍人として殺しあっている兵士もまた、彼らの様に遊びまわる子供時代があっただろう。
フランソワ・トリュフォーの「あこがれ」でも、そんな事をふと思ってしまうシーンがあった。
おにごっこの果て、洞窟の中に隠された探し物。
不安定な足場、徐々に暗くなる空の色が不安を煽る。
仲間と再会し一安心したのも束の間、薄暗い森の中には猪以上の獣も潜んでいるだろう。
そんな獣のように眼光を光らせる軍人に助けられるシーンは面白い。
食事の席で軍人たちが交わすやり取りが怖い。戦争はまだ終わらない。
劇中で流される「チャップリンの移民」でゲラゲラ笑う子供たち。俺もついツラれて笑ってしまう。
ピアノのカップルも口付けを交わす。
少年たちは戦争もなんのそので友情を深めていたが、その平和な日々は突然終わりを迎えてしまう。
ユダヤ人というだけで“別れ”なければならない悲しさ。
神父たちが「さよなら子供たち」と言い、壁の向こうに消えていくシーンが忘れられない。