9.記憶を無くす、名前を無くす、過去を無くす。それは、自身の存在証明を無くすこと。なーんて言ってたりすると、つい、安部公房の『壁-S・カルマ氏の犯罪』とか『燃えつきた地図』を思い出しちゃうんですけども。しかしこちらは映画作品。過去を失い帰属を失い、ただ「現在」のみを生きる主人公の姿が、映画ならではの語法で描かれております。それは、彼を取り巻く冷徹な「視線」。いささか戯画化された登場人物たちの立ち居振舞いにおいて、表情というものが徹底的に抑えられ、その中で強い印象と緊張をもたらすのが、主人公へと注がれる、他者たちの冷たい視線の数々。その視線は主人公を通じて我々にもブスブス突き刺さってきて、ナントモ居心地のわるーい映画体験になっております。しかし、結末はいかにも「ものがたり」らしく、ユメのあるまとめ方、実に心憎い。拍手!! 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2007-04-12 23:15:20) |
8.《ネタバレ》 静かだけれど確かな時間がこの作品にはあります。 貧乏ながらもジュークボックスのあるお部屋は素敵です。 淡々と進むお話で、主人公にこれほど惹きつけられるとは。 恋人の慎ましさにも、大いに共感しました。 【たんぽぽ】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2006-04-18 20:48:25) |
7.台詞や演技よりも画面に映っている絵で物語を理解させる作りは好感が持てる。 みんなタバコ吸い過ぎです。空調の効かない金庫室の中で吸うのだけは遠慮して欲しかった。 過去のない男を何とか拘留しようとする警察に法律を空(そら)で唱えて言い負かす弁護人が一番かっこいい。そして、救世軍の淡谷のり子が毎夜夢に出てきてブルースを切なく歌う。思い出すとまた今夜も眠れない。 【WEB職人】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2005-05-16 21:27:06) |
6.久々に2回観た映画。現実世界を良質のふるいにかけて、残ったものを美しい色と素敵な音楽で味付けした感じでした。苦味も甘味もしょっぱさもいろいろ入っているけど後味はなぜかとてもすっきりしています。ごちそうさまでした、という感じ。 【クリロ】さん 9点(2004-04-25 19:35:22) (良:1票) |
5.《ネタバレ》 かなりツボ。始まって十分も経たないうちに主人公が死んでしまうなんて…。それにしてもおっさんとおばさん最高です。特におばさんは歩き方からしてもう監督カウリスマキワールドの象徴て感じです。「人生は後ろには進まん。進んだら大変だ。」の言葉にはしびれました。音楽の使い方もかなり凝っていてよかったです。 【kaneko】さん 9点(2004-03-18 02:21:36) |
4.貧しくても豊かな世界がこの映画には広がっています。鑑賞後、とても気分がよくなりました。カウリスマキはかなり小津安二郎作品にかなり影響を受けてますね。あと、クレイジーケンバンドの挿入歌が!! 【シュンペーター】さん 9点(2004-02-17 23:56:12) |
3.全体的にポップに撮られていて、カウリスマキ監督が開かれた作品を撮ろうと意識して作ったのだろうなということが感じられます。色彩もとてもカラフル。ギャグも冴えていて劇場は笑いに包まれていました。物語にも動きがあり、とても見やすいです。ただ、普通の映画っぽい方法論を導入していることで、カウリスマキの強烈な個性はやや薄まっているような気もしました。でもステキな映画です。 【藤堂直己】さん 9点(2004-01-25 11:10:24) |
2.この映画のことを思い出すとほっとする。過去をなくした男の素朴な生活や、気になる彼女とのデートなど、どれもささやかだけど幸せなにおいがする。ハンニバル、こいつも素朴な犬でかわいかった。気持ちがささくれ立っているときに見るといいかもしれません。今年一番しみじみと「良い映画だったね」と言える一本。 【のはら】さん 9点(2003-12-30 03:12:52) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 いきなりネタバレですが、過去のない男がお湯をもらって紅茶を飲む(いや、たぶんもうあれは紅茶じゃないだろうけど)シーン、好きです。最初のミイラみたいなとき、鼻の曲がりは逆じゃなかった? 【Bridget】さん 9点(2003-08-05 03:03:38) |