2.《ネタバレ》 メルヴィルの映画で描かれるギャングたちは、ゴロツキである前にその道の“プロフェッショナル”だ。
本作はメルヴィル作品の中で最も寡黙であり、静かであり、鮮やかな一篇だろう。
銀行を襲うまでのシークエンスには一切無粋なセリフが無く、彼らは練られた計画によって緻密な機械の如く「仕事」を完遂させる。しくじればブタ箱、或るいわ死刑台・・・ミスは許されない。
その様子は余りに淡々とした描写だが、丁寧かつ持続された緊張は我々を画面に釘付けにする。そしてポツリとつぶやかれる「仁義」の一言。たった一言にこれほど重みがあり、これほどの意味が込められた作品は滅多にお目にかかれない。
「モラン神父」や「海の沈黙」で常に会話を重視した作風のメルヴィルだからこそ、“寡黙”な仕事人たちが心の中で交わす“以心伝心”を描けたと俺は思う。