1.敢えて体制側に与せずというスティーブン・ソダーバーグの心意気には敬意を表するが、映画を見馴れていない観客にはキツいだろう。非常に実験的な要素が強く、ジュリア・ロバーツやブラッド・ピットというビッグネームを出演させたことによって間違えてマスを動員してしまいかねないリスクは大きいと思う。BGMの少ないハンディカメラの映像、散文的な展開、劇中劇とそれを製作中の俳優たち、オンとオフの切り分けの難しい不親切な構成は単調で退屈だが、ちゃんとそれに続く展開の面白さを予感させている点は素晴らしい。あくまでも物語の先行きに興味が持てるかどうかにかかって来る運びだが、それなりにニヤリと笑える仕掛けも爆笑モノのネタもあり、通好みの作品としては評価できる。オスカーWノミネなど華やかな経歴が記憶に新しいスダーバーグが、敢えて巨匠になろうとせずに貧しい映画小僧だった頃の「やりたかったこと」を忘れずにいること自体は、未だかつて誰も実行できなかった偉業であると言えるが、残念ながらビッグネームに騙されて足を運んだ一部の観客に対しては完全に失望させてしまったとしか思えないため手放しで誉めちぎれない悲しさはある。劇場で観る以上、楽しさは他の観客と共有できた方が嬉しい。やっぱり大物スター不在のちょっと極端な実験映画として公開した方が、みんなが幸せになれたような気はする。