1.《ネタバレ》 原作は河竹新七の歌舞伎「籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)」。廓を舞台にしたデスペレートな悲劇を内田吐夢が格調高く色彩鮮やかに描ききった傑作時代劇。次郎左衛門が花魁の八ツ橋に心底惚れ抜くキッカケが単に肉欲に溺れるのではなく、ほんの気まぐれから発した何気ない彼女の台詞「心の中にまで痣が~」だった、という依田義賢の脚本アレンジが何とも素晴らしい。ラストの村正を振るっての大立ち回りは千恵蔵の他を圧する風格あればこその名場面。時代劇の所作を重厚に演じきれる本物の役者が絶滅した今、その存在感は一層光芒を放つように思えてならない。昭和は遠くなりにけり、か…。