6.《ネタバレ》 宮崎あおいの好演は言うまでもないが、黒木メイサも「誰からも好かれる、嫌みのない美女」をとてもうまく演じている。二人の好演に挟まれて玉木宏は‥。
厳冬のニューヨークシーンの玉木がキレイだ。突然行方知れずになった静流から手紙を受取り、喜び勇んできた誠人らしく、目がきらきらしている。そして、静流の個展を見ながら涙を流す姿は、結城美智雄でも千秋真一でもなくて、でも美しかった。あのキスの後、「私、私に生まれてきてよかった。」と言っていた静流を思い出しながら、口をゆがめて泣く顔が美しくて、かつ暖かかった。
大学生の役を演じるために声を高めに出したそうだが、年齢のギャップは感じなかった。が、誠人が間抜けっぽくなって、それが不自然だと言えば不自然だった。もし「瀬川誠人」という役が「人付き合いに不慣れな男子」というだけだったら、例えば妻夫木聡が演じた方がうまく自然さが出たかもしれない。でも、自然にはなっても、「里中静流」のキュートさがこんなにも表出されただろうか、と思った。時には妖しささえ漂わす事も出来る美形の玉木が、そんな気配など感じさせず、間抜けのように、演じる。つまり「瀬川誠人」には、「美形でありながらそれに無自覚(=間抜け)」という要素が欠かせないのではないか。それで、横断歩道で静流に一目惚れされ、「完璧な美女、みゆき」からも好意を寄せられることの説得力が生まれる。二人の好演の間に立つ瀬川誠人役は玉木宏でなければならなかった、と納得した。
30歳を迎えてビジュアルに「毅然としたもの」が加わってきた玉木は、今後このような“ゆるい(?)”役は演じないような気がする。その意味でこれはひとつの記念碑だと思った。後で振り返ったとき、これが玉木の20歳代の記念碑的な作品になるような気がする。(もちろん、「のだめ」は別格。)