1.“fish story”とは、「ほら話」という意味だということを、この映画で知った。
釣り人の手柄話から意味を成しているらしい。
細かく見れば決して完成度が高いとは言い難い映画であることは間違いないが、僕はこの映画が好きだ。この“お話”がたまらなく好きなのだと思う。
何十年も前の売れないパンクバンドの最後の一曲が、数十年後の世界を救う。
「風が吹けば桶屋が儲かる」や「バタフライ・エフェクト」など、些細なアクションが別の些細なアクションへと徐々に連なり、時間も場所も超えた世界の大きな事象に繋がるという現象は、世界中で古くから語られてきたことであり、この物語のストーリーそのものには目新しさはないのかもしれない。
けれど、このストーリーの本当の魅力はまた別のところにあって、爽快感でもあり、瑞々しさでもある“それ”は、それこそが、この鬱積ばかりが溜まる世界への“救い”のように思える。
昔々の名も無い若者たちがふいに生み出した「無音」が、「運命の出会い」と、「正義の味方」と、「世界の救世主」を生む。
もしそれが「ほら話」だったとしても、その“荒唐無稽”を信じられた方が、きっと人生は楽しいし、この世界はもっと素晴らしいものになるように思う。