1.《ネタバレ》 やられた。計算されている。字幕に補佐されなくては何がどう展開しているのかわからない内容になっている為、一見聾唖者の聾唖者協会による聾唖者のための映画に見える。が、これによって健常者の観客にマイノリティ感を与えておいて、そこから聾唖という少し違った視点から喜怒哀楽、社会適応、世界観の認知、人間愛を、観客と登場人物の孤独を一体化させる事で描き出す技法は今までになかったと思う。当事者製作ということもあるのだろうが、障害を持つ当事者の世界観を外からではなく中から描き出すという方法としては逆説的成功であり、こうした新たな表現技法を提示してくれた制作陣には敬意を表したいと思う。もちろん聾唖協会の宣伝的な内容に100%なっていないとは言わないが、情緒表現や世界表現が均一化しつつある今日この頃の映画に対してカツを入れる作品であることは間違いなく、小さな映画館で当事者だけで見るにはあまりにも惜しい作品だ(ちなみに僕は耳は健常)。