1.《ネタバレ》 誉田哲也作品の初映像化(たぶん)。原作は「シックスティーン」に始まり「エイティーン」まで続く三部作。その初編の映画化です。正反対な性格の二人が剣道を通して出会い、ぶつかりながら成長する。言葉にすると陳腐だけど、二人の対称的な人物造形が相当に練られていて、とんでもなく愉快に映ります。特に授業中に鉄アレイで腕を鍛え、「五輪書(宮本武蔵著)」に没頭する成海璃子の剣道バカぶりが抜けている。対する北乃きいが、普通の女の子を演じながらも存在感で負けておらず、成海璃子の仏頂面と絵的なバランスも取っていて良い塩梅。試合場で手首を捻挫した成海璃子が、補欠の北乃きいを自分の代わりに指名するシーンに自分は涙腺が緩みました。突っ張りキャラが襟を正し、他者を「認める」シーンは美しい。今作はスポ根サクセスストーリーではなく、この二人の関係だけに焦点を絞っています。自分にも覚えがあるが、高校で一緒に部活をやった奴らの何人かは、何歳になっても仲間意識が無くならない。それは形容が難しいが、友情や信頼と云うイメージではなく、もっと特別で大切な存在。人生という長い視点に立つと財産と言っても良い。今作は、二人の少女がそんな存在に辿り着くまでの不器用な道中を描いた心地よい青春映画でした。数年のうちに男を奪い合って絶交しても責任は持てませんが(笑)。原作者の誉田哲也だけど、氏の作品はどれも一気に読んでしまう。登場人物の心情描写が現代的かつ丁寧だから感情移入もしやすく、それは読後の爽快感にも繋がる。今作のように動きのある描写も多いので映画向きかも。原作の二編・三編では、離ればなれになった二人のその後が描かれる。タイトルの「武士道」の意味も掘り下げてあって、こちらも楽しいです。