1.《ネタバレ》 雪に埋もれたエストニアで静かに暮らしていたアンヌが、パリに気持ちが動く転換にカセットデッキから流れるジョー・ダッサンの「Si tu t'appelles mélancolie」で、観ている私の気持ちもパリに向かいました。
アンヌ、フリーダ、ステファンの心の動きが、それぞれの目の動きとちょっとした動作で示される・・・フランス映画っていいなあと改めて感じました。vousがtuになるところもフランス映画ならではですし。
結構複雑な人間関係があったのにそれをさらっと分からせてくれるテクニックは脚本の力なのでしょうか。
そしてもっとも心に残ったセリフはアンヌがステファンに別れを告げに行ったときの会話・・・
私は今90を過ぎた父親をほぼ毎日看ているのですが、いつまでも生きていて欲しいと思う心の裏側のどこかに・・・
参りました。シリアスです。
この会話の時の二人の位置が妙に近すぎると思ったら、フリーダが(香水で?)見抜いていたところも秀逸!
アンヌが飛行場に行く地下鉄に乗らなかった理由は分からなくもないけど、もう少しアンヌの心の葛藤が描かれていれば良かったのにと思いました。また、フリーダがアンヌに「ここがあなた(tu)の家よ」とまで言うには、やはりフリーダの心の描き方も少し足りないように感じました。
最後の最後、アンヌとステファンを見るフリーダの表情が喜びや安堵だけではなく、「赦し」の深さまで表現しており、ジャンヌ・モローが名優と言われる所以ではないでしょうか。
今まで気になっていた映画でしたが、観て良かったと思いました。