1.《ネタバレ》 交通事故で両親を亡くしたおっこ、でもずっと涙を見せないの。
その気持ちを抑え込んでるのがわかるので泣けて、それが絶対どこかで破裂しちゃうのでしょう、ってわかるので泣けて。そして・・・
おっこが泣かないのは、泣いてしまったら両親の死を認めてしまうことになっちゃうから。でも、そのクライマックスが、あまりに過酷な運命の巡り合わせで、もう。
でも、そんなおっこを包む世界の優しさに癒されて。
おっこが暮らすことになる温泉旅館の人々とお客さんたち、温泉街の人々、学校の友達、そして、おっこにしか見えない幽霊と子鬼。
様々なふれあいを通しておっこが両親の死を受け入れ、乗り越え、成長してゆく姿が描かれるのね。
2人の幽霊は劇中では実際に存在しているのだけれど、おっこのイマジナリーフレンドの象徴で、その姿が見えづらくなる、別れがやってくるというのが、おっこの成長を示していて。それはとても切ないのだけれど・・・
最初はイヤなクラスメイトに思えた大ホテルの令嬢なピンふりも、真面目で精いっぱいに生きていて、おっこに真剣に接してくれる良いコだし、ここに出てくる人々みんなが本当に魅力的。
『のんのんびより ばけーしょん』に続いて脚本はさすがの吉田玲子。
群像の中で人と人との繋がりを、甘いだけでなく、時に厳しく、時に切なく描いてみせるのは彼女の真骨頂と言えるのかも。
蛇足だけど水領がソフトトップを走行中に開けちゃって「!」ってなったのだけど、最近のポルシェって時速50km以下ならオープンできるのね。私が乗ってたクルマとは時代(と価格)が違うわ。
ジブリ的という評価もあるけれど、少なくともおっこはジブリのヒロインよりももう少し現代的でおバカなカンジなのが良いわ。絵柄もエンドロールのイメージボードにはまだジブリ臭があるけれど、実際の映像はジブリとは違った魅力があるし。中盤のショッピングモールなんかはジブリ映画には出て来ない要素でしょうねぇ。ジブリ的なるモノをトレースせず、独自性があるからこそいいの。
色々と模索されている「ジブリの後継」の中ではこの映画のスタッフはかなりいい線を行ってる気がするわ。
ここ数年公開された様々な家族向けのアニメ映画の中でも抜きんでた良質な作品ね。