1.《ネタバレ》 アニメ本編の正統な続編。「リズと青い鳥」を見ていなくてもアニメ本編を見ていれば全く違和感なく続編として楽しめます。
「リズと青い鳥」を見たことによる補正はあるかないか程度、あっても+0.1点、みたいな印象。
劇場版だからといって何か特別なことはなく、主人公が2年生になった世界を描いているだけ。
アニメ本編では上級生の間で問題が発生し、それに主人公が関わり、なんやかんやする、といった形だったが、本作はその対象が新1年生になっている。
新1年生の間で発生している問題が見受けられ、それに主人公が関わり、やはりなんやかんやする。
「劇場版だから」といってアニメ本編の流れとは異なる尖った演出や展開を差し込まれたら「え?」と思っていたところですが、それが一切なく本当にアニメの続き、という作りとなっているところが素晴らしい。
~以下自分にとっての本作品の見え方~
「響け!ユーフォニアム」シリーズの凄いところって、何かを突き詰めようとする人間の感覚ないし本質を見事に描いているところ、それに尽きます。
本編でも劇場版でもはっきりと明言されていない、というかボカされていますが、結局「好きだからやってるだけ」というそれに尽きるんですよね。
この言葉は本質を突いていて、やってる理由は「好きだから」「面白いから」というただそれだけ。そこには目的も前後関係も無いんです。
つまり「周囲の人が~」とか「周囲の人からどう見られるか~」とか「それをやる意味は~」とか「将来は~」とか、まあそんなのどうでもいいとは言わないまでも、関係ないというか、考えてないというか、自分にとって発想の外なんです。
そういう打算でやってるわけじゃなく、好きだからやってたらなんか上手くなっただけなんですけど、的な。
だから質問されると困るというか面食らうというかポカーンとするというか、その答が自分自身でも良くわかってない、というのが本音で、「確かに何でこれをやってるんだろう」と自問自答を繰り返した結果辿り着く答が「ああ、好きだからやってるだけだわ」になるんですよね。
そしてそこから演繹的に発展する思考が「楽しい→自分の成長が楽しい」、「楽しい→せっかくだから何か目標作るか→将来誰かのためになればいい」といったもので、これらを表現してるのが主人公と高坂さんの思考。
しかし現実には周囲の人間がいるわけで、特に本作のような個人の技量のみではどうにもならずチームの技量が問われるジャンルについては常に周囲との関係が付きまとうし、周囲に影響されそうになるし、なんなら周囲も高める必要がある。
「好きだからやってるだけ」なんて人は僅かで、人には人それぞれの事情や考え方があり、立ち居振る舞いが異なる。
それを見事に描いているのが本作。
本質である「好きだから(周囲関係なく)やってる」を表現しているのが高坂さん、「技量はあるが周囲との関係を気にしちゃってる」のが新1年生の2人、「好きだから」をストレートに表現しているのがみどりちゃん、「好きなんだけど技量が追い付いてない」のが葉月ちゃん、「好き」のベクトルは違うが努力の積み重ねでハイレベルに到達したのが鎧塚さん、「好き」云々以前に部活としてやってるのが多くの人たち、といった描き方。
キャラクターそれぞれの「ジャンル」に対する愛の濃度、それに付随する技量が異なり、それを前提とした上での環境や考え方の違いがある。
それが見事すぎるほど見事に、非常に現実的に描かれている。
故に本作は素晴らしい、それが私の見え方です。
何よりすごいのは、「原作者さんって何かのプロ?ないし何かを極めた人?」っていうくらいに、よくその感覚を知ってるな、という点。
私は某ジャンルで瞬間最大風速世界1位を経験した人間なので、そこに至る過程を知っています。
周囲からは「将来が云々」と言われ、「それやって何の意味があるの?」と言われ、「あまりにそう言う人が多いから自分が間違っているのか?と」自分を疑い、そのプレッシャーがクオリティに影響し、でも自分を信じ、最終的に辿り着くのは「自分がそれをやる根拠?・・・楽しいからだ、好きだからだ」という結論ないし心理の流れに行き着く。
そんな私にとって、本作は「よくそんなこと知ってるな」「よくそれをここまで上手く描けるな」という感想になります。
好きなキャラクターは高坂さん。
特に初期の高坂さんの考え方はピシャリ。その通りだと共感できます。
本劇場版を見た感じ、苗字を気にする新1年生のくだりが回収されていないし、主人公の2年生編が描かれたのなら3年生編があるはずだし、といった点から、続編を強く期待しています!