1.《ネタバレ》 わずか34分の短編なのに傑作長編映画を見たときのような濃度と満足感。
原作絵本のタッチをそのまま活かしたラフの線を残したアニメーションに、
家までの旅路を静かに優しい眼差しで見守っている。
だからこそ、時折挟み込まれる哲学的で、下手すればあざとさも感じてしまう台詞の数々が、
スッと心に入ってくる。
「弱さを見せることは強さだ」。
「今まで言った中でいちばん勇敢な言葉は何?」。
「助けて」。
「助けを求めることは諦めるのとはちがう。諦めないためにそうするんだ」。
彼らは出会うまでどこか孤独だった。
モグラが罠にかかったキツネを助けた勇気、肉食のキツネが彼らと一緒にいる勇気、
馬が自らの秘密を明かした勇気、それが大きな力となって目的地の少年の家に導かれていく。
ところが少年は我が家ではなくて、二匹一頭の元に帰ることを選んだ。
目頭が熱くなる。
なぜ少年は雪原に迷い込んだのか、そして目的地だった我が家が本当の居場所なのか分からない。
そこを踏まえると、様々な隠喩と想像を掻き立てられる。
愛にあふれ、優しくて、温かくて、美しい映画だった。