7.《ネタバレ》 フォードの西部劇の最高傑作が「リバティ・バランスを射った男」「捜索者」だとすれば、人間ドラマの最高は「怒りの葡萄」「静かなる男」とこの「わが谷は緑なりき」!
炭鉱の街に生きる人々の家族愛と絆を描いていく。
炭鉱作業の描写は終盤まで挿入されない。
それはススだらけになった男たちの顔が物語るし、主人公が成長する過程で挿入される。
そう、本作の視点は子供の主人公の眼だ。
大家族の末っ子として生まれた主人公。
炭鉱でたくましく働く兄弟たちへの憧れ、様々な出会いと別れを、幼い眼に焼き付けていく。
ストライキ、孤独と戦う父、一喝する母親の強さ、一人また一人去っていく兄姉弟たち・・・主人公も勉学に励み、知る人間のいない学校で戦った。
殴られたら殴り返す。
大人が手を出したら大人が倍返しだ!
フォードの暖かい人間ドラマがここに詰まっている。
燃え盛る炭鉱に何のためらいもなく助けに向かう男たち。
「果てなき船路(果てなき航路)」でジョン・ウェインを助けに行く水夫たちに通じる熱い魂。
どんな逆境でも懸命に生きる男たちは、何時の時代もカッコイイ。
それを見守る母親、女性たち。
牧師も拳闘士も関係ない、みんな一人の人間だ。
ラストは悲しくもあり、温もりもある締めくくり。
家族の魂は主人公の心の中に生き続ける・・・そんな映画だ。