2.キン・フーが何故巨匠と呼ばれるのか。それはひとえにアクション豊富な娯楽もあれば、映像の美しさを求めた幻想的な作品も撮っているからだ。
キン・フーにカンヌでの受賞という名誉を与えた「侠女」。
俺は「山中傅奇」の方が完成度は高いと思うし、アクション映画にしても「迎春閣之風波」「忠裂圖」ほど洗練されたものは感じない。
それでも「侠女」が一つの到達点として語られる事は間違いないだろう。
キン・フー映画にしては上映時間の長さに驚くが、計算された画面作りと中盤のアクションはやはり凄い。
竹林における戦闘は屈指の名場面だ。人間離れした跳躍で切り結ぶ武人たちが入り乱れる!
特筆すべきは、ヒロインの徐楓の演技が素晴らしい。
他のキン・フー映画は女性としてはパッとしない・・・つうか男女関係無くブッた斬りまくりの凄まじい役回りが多すぎた。
今回の徐楓は女性らしさを細かい表情の違いで見せてくれる。キン・フー映画の常連である徐楓は、彼の作品を通して確実に役者としてのスキルを上げていったのだろう。
後の「グリーン・デスティニー」における強烈な役回りも納得がいくぜ。
終盤の展開は「あれ?見る映画変わった?」というくらい蛇足というか、別の映画になったと錯覚を起こす余計とすら思えるクライマックスだが(やや難解だし)、それでも画面全体を包み込む太陽の美しさ。
この映像の美しさがキン・フーを巨匠にしたのだろう。
彼の代表作としては充分な仕上がりだ。