1.《ネタバレ》 サイケでアナーキーでレボリューションでフリー(・セックス)な、1960年代スウィンギング・ロンドンにやって来た女の子が繰り広げる、“本当の「自分」と「愛」探し”。…なんて言うと、何だか当時のありがちな〈トンでる若者(笑)の無軌道な青春像〉を描いたシロモノと受け取られかねないなあ。でも、主人公のジョアンナは、たとえばロンドンという“不思議の国”に迷い込んだアリスのようでいて、実のところ、彼女の方が「ワンダー」なんだ。階級も、人種も、何もかもを超えて、すべてを受け入れるジョアンナ。恋人の黒人青年が殺人を犯しても、彼の子どもを宿した彼女はそれすら受け入れるんだから。そんなジョアンナを優しく見守るかのような映画の眼差しに、いつしか観客のぼくたちの眼差しが同化してしまう。このブッとんでいる“自然体”な女の子を、限りなく愛しく慈しんでいる自分に気づくんだ。…確かに、「好き・嫌い」がハッキリ分かれるタイプの映画かもしれない。けれど、素ッ晴らしいナンバーの数々(そう、これは一風変わったミュージカルとしても見ることができる)や、映像以上に音にこだわり、様々なサウンドトラックをコラージュしてみせる演出の「才気」も微笑ましい、これは心から愛すべき1本であります。少なくとも、ぼくの中では未だ「彼女」は輝き、生き続けている。…ジョアンナ、まだトンでるかい!