1.《ネタバレ》 オーソン・ウェルズの史劇映画にハズレなし(特に「フォルスタッフ」は最高傑作)という印象。
この「マクベス」は後の「オセロ」に続く演出はもちろん、ウェルズのシェイクスピアへの尊敬と挑戦が凝縮された傑作の一つ。
例えば、中盤の女が石の階段を上っていく様子をワンショットに収めたカメラワーク。
これが後の「黒い罠」における冒頭の見事なシークエンスに繋がっていくのだろう。
ファースト・シーンと言えば本作の出だしも強烈なもの。
おどるおどろしい雰囲気、濃霧の中で怪しげな儀式を繰り返す三人の魔女。そこに居合わせた騎士二人。二人の呪われた物語はここから始まっていく。
一人の男が如何に栄華を極め、如何に仲間を裏切り、如何に滅んでいくか。その過程の凄まじさ。
正に「市民ケーン」だが、張り詰めた緊張の糸は最後の最後まで持続される。
この作品はシェイクスピアの舞台劇を演じるように、重厚なドラマとセリフで魅せてくれる。派手な戦いの場面がない代わりに、心理面での葛藤や恐怖がマクベスを常に襲う。
魔女の予言で狂う男、女、男!
冠を頂く姿の不格好さは、まるで小人が一時の権力に溺れたような滑稽さを感じさせる。
ラストの決闘は少ない時間ながら鬼気迫る演出だ。
マクベスは玉座で黙って傍観するような器ではない。剣を奮って戦うマクベスの活き活きとした表情を見れば、一目瞭然だ。
首を斬り落とす場面の繋げ方が面白い。
その屈強なマクベスを演じたウェルズが「フォルスタッフ」ではずんぐりむっくりになってしまうのだからビックリ。