1.《ネタバレ》 本作は恋愛映画とフィルム・ノワールの狭間で揺れるようなラブロマンス。
ナチスを絡めたストーリーは戦後のモダニズムを捉えていたりするから不思議。
本作はまた3人の男女を軸にストーリーは展開される。
細かいセットやギミックなど随所に凝られた演出、ベン・ヘクトの見事なシナリオはまったく飽きるという事をさせてくれない。
ジョニーの賭博から始まるファーストシーン、ジョニーの危機を颯爽と助けるベイリンの登場、そして妖艶な美女ギルダ。
男勝りで肉感のある女優リタ・ヘイワース、これほど彼女の個性と役柄がハマッた作品は無い。グレン・フォードの演技も最高。
過去に愛し合った男女二人。
別れてみればジョニーは賭博に明け暮れ、ギルダは危険な男と床を共にする生活を送っていた。
変わっていないのはギルダの美しい歌声と力強い踊りだけだ。
皮肉にもジョニーの命を救ったベイリン・マンスンはギルダの夫だった。
未練が残るジョニー。本当はギルダとよりでも戻そうかと積極的になりたいが、恩人のベイリンの手前未練をしまい込む。
ギルダもジョニーとまた一緒になろうかと思いつつ、ジョニーの気持ちを知ってか知らずか他人の男と一緒にいる光景をジョニーに見せつける。
それを黙って見つめるベイリンの不気味なこと不気味なこと。
ベイリンの右腕として頭角を表すジョニーだが、命懸けの日々からいつか抜け出してやろうと野心が芽生えてくる。
ギルダもジョニーに急接近し、ベイリンもまた自分の命を守るために逃げようとする。
様々なドラマが交錯し、3人は己の希望を満たす結果となった。
ただ心は満たされない。
ジョニーはよりを戻したとはいえ、恩人の元妻となったギルダに複雑な気持ちを抱く。
ギルダもまたそんなジョニーに対して申し訳なさそうな後ろめたさを感じさせる。
ギクシャクしながらも再び元の仲に戻ろうとする二人。しかしベイリン!
この男もまたギルダを愛していたのだろう。
ラストはちょっとベイリンがマヌケすぎて何だか可哀想になってくるのだが、際立った演出はそれを感じさせない。
つうか帰ってくんなよ。一番未練タラタラだったのコイツじゃねえか。
「愚なる妻」のカラムジンかおのれは(ハゲ具合まで一緒)。
その後の刑事な粋な対応、ハッピーエンドなラストと中々の作品だった。