1.ニコラス・ローグにしてはちょっとキレ味悪いかも?という声も聞こえて来そうなところだが、このぐらいの弾け具合が実は一般視聴者とのギリギリの接点かも知れない。母親を探して旅する青年、生き別れたわが子を記憶の底に封印したまま、年の離れた夫との距離感に悩む妻。決して明かされることのない二人の間の密かな絆に、人は愛する者を見つけるのではなく求めるのだというさりげないメッセージが込められている。いつになくシリアスなクリストファー・ロイドの怪演といい、まだ頬のふっくらとしたゲイリー・オールドマンの初々しさといい、ちょっと珍しいモノが観られるという点でも一見の価値はある作品。含みも多く、受け止めようによっては多様な見方のできるストーリーは、噛めば噛むほど味が出る。際限なく繰り返しの鑑賞に耐える作品である。