4.《ネタバレ》 ヒーローモノでもアメリカ万歳、軍事力万歳ものでもない
スピルバーグの大傑作。
すさまじいリアリティと恐怖の大人の映画。
カメラの視点が人間の高さに統一されています。
視点の意味はふたつです。
一つはほとんどのシーンが人間の目の高さに統一されてること。
もうひとつは基本的に「トムが見たもの」しか映像として出てこないこと。
だから、全てのカットがものすごいリアリティを伴ったインパクトで
脳裏に焼き付きます。
これはこういうSF映画としては画期的じゃないかと思うのです。
普通は、迫力を出すために、あるときは主人公の視点から離れ、
「神の視点となり」カメラを縦横無尽に動かし、
例えば実際に宇宙人と軍隊の兵器がぶつかりあうところを
バンバン撮るわけですが、今回神はいません。
基本的に「トムが見なかったものは写さない」という
手法を貫いています。
これは個人的には想像力をかきたてられ、
逆にものすごいリアリティを感じるのですが、
ここだけじゃなく、いくつか出始めてきた感想を読むと、
もっとスターウォーズなどのように、
ドンパチやってるシーンを詳細にハッキリ、バンバン見せて欲しかったというのが多い。
ラストも原作通りじゃなく、
人間側の知恵と勇気と工夫で、猛烈な反撃シーンを見たかったというのも多い。
いや、それならいつもの、軍事力賛美、
アメリカ万歳映画になってしまうだろうと思ってしまう。
あるいは少年ジャンプで育った漫画的発想かもしれない。
少年ジャンプもいいんだけど、この映画の素晴らしいことは
市民は圧倒的テロの前には「全く無力で、呆然と見て逃げ回るしかない」というところです。9.11事件を強く思い起こします。
骨格もラストも原作通りでGOOD。蟻と人間ほど力が違う場合、蟻の知恵と勇気で
反撃できて勝利を収め、最後、ばんざ~いで終るのはなんともリアリティにかけるのです。
圧倒的強者の自滅に待たなければならないわけです。