1.子ども二人を事故で亡くして以来関係が破綻し、別居をはじめた作家夫婦のもとに、作家見習いの学生がやってきて、それぞれの間を往復するというお話。いくらでも暗くなれるような状況に、性格的にも半分破綻した作家がまきちらす揉め事が続く中、いかにもアーヴィングらしい毒のきいたユーモアがぎりぎりのところで希望を残します。途中にちりばめられた微妙な複線をひとつひとつ丁寧に(しかも想像を超えるかたちで)回収していく技は、只者ではありません。例によって長い長い長編小説を、上手に一つのお話として映画にまとめきった脚本が実に素晴らしく、また監督の要求をおそらく超える水準でリアルに演じた役者陣も言うことありません。アーヴィングの映画化作品としてはこれまでで最良のものではないでしょうか。