11.素晴らしい。映画が従来の映画ではない。映画がプロセスを持つのは暗黙のルールだと思っていた。
一般の映画中の物語はプロットにより構築され3、4段論法によって意味付けを為していく。
この作品ではそんな無粋な事はしない。
プロットはただ分散的に与えられ、かといって物語が無いわけではなく、現実の世界の様に気まぐれであり、
そして映画なのである。ランボーの詩によって彩られる世界。詩のイメージに合わせた絵画群。映画を越えた映像作品。
物語は一般人の破天荒な逃避行でありながら、それは醜いというよりはむしろ美しい。
難解さと重苦しい雰囲気で趣きを与えるというよりは、ポップに映像と詩により命題を与える。
倫理観や論理構築を駆使する様な気難しさを必要とせず、人の心の経験論に基づく共感をゴダールらしいアプローチで求めてくる。
それが心に響く度に私に笑みがこぼれる。ああ、ゴダールはまさに詩人だ。
作品中の映画監督が「愛、暴力、行動、云々、死、つまり感動、コレが映画だ!」と言う。
クラクラさせられる。心揺さぶる何か、ソレが感動である。感動は常に正義である必要もなく美しくある必要もない。
いわゆるロック(心揺さぶるモノ)なのである。映画を詩にした人の言葉だ。コレを実践出来るは天才としか言い様がない
。
ゴダールの作品を従来の作品と並べて点数をつけるなんて不可能だ。
もはや土俵が違う。一般受けしない理由も良くわかるが、これから、ずっと映画を観ていって、ある日エンターテイメント
の限界を感じた時にゴダールを観れば、必ず新しい風を心に感じることが出来ると約束する。
歳と共に、ある日ピカソが素晴らしいと思える様に。
ゴダール万歳!!
それにしても、北野武の「HANA-BI」は確実にこの「気狂いピエロ」に影響を受けていますな。