1.《ネタバレ》 10点をつけざるを得ない超絶神映画。
常人のセンスを遥かに越えた監督と撮影監督の手腕と想像力には脱帽せざるを得ない。
普通の映画とはまさに一線を画すモンスター映画だ。
本作を有楽町「日劇1」という1000人程度のキャパの映画館で観れたことは、自分にとって誠に貴重な体験となった。
映画の中の世界を、まさに「体験」したと言っても言い過ぎではないだろう。
終盤の8分長回しが話題になっているが、凄いのはその8分だけではなく、冒頭からずば抜けている。この映画のカメラの動きを考えながら観ていたら、武者震いが止らなくなった。あまりに凄すぎて圧倒されっぱなしで、観ている自分は終始半笑い状態だった。
まばたき一つするのが惜しいほどだ。少しでも油断したら「やべぇ、今どうやって撮ったんだ」と後悔してしまう。
監督に負けず劣らずクライブオーエンもよい演技をしている。
子どもが産まれなくなった世界で、アイロニカルながらもとても情熱的な男を演じきった。
ジュリアンが死んで木陰で泣き崩れる姿、ジャスパーが死んでミリアムに「触るな」と怒鳴る姿、怒鳴った後にキーに「大丈夫だ」という姿、ラストの船の上で「ゲップさせてやれ」とアドバイスを送って(自分の過去の経験が活きているのだろう)、「本当に良かった」とつぶやいて息を引き取る姿、どれも素晴らしいものだ。
そして何よりも本作の世界がクライブオーエンが知り得た情報のみで成り立っているのも面白いところだ。
情報不足・説明不足という批判を承知で、あえてそういうモノ作りを試みている。
「子どもが産まれなくなった理由」や「ヒューマンプロジェクトとはどういう組織か」などはあえて描かなくてもよい。むしろ本作ではこれらについても十分過ぎるほど情報が与えられていると思う。
ストーリーがないという批判を受けるかもしれないが、ストーリーも十分すぎるほど描かれていると思う。これ以上描いたら「蛇足」になってしまうかもしれない。
ストーリーにおいても、映像においても、メッセージ(子どもを観て皆戦いを止め、道を開けるシーンは映画史に刻まれてもよい)においても文句の付け所のない完璧な映画と思う。
映画の見方・作り方、映画に真摯に向き合う姿、映画の面白さを教えてくれた本作には感謝したい。