2.舞台はベネツィア。ベネツィアに壁画修復の仕事でやってきた外国人夫婦のもとに次々と不可解な出来事が発生します。
本作は自分にとっていちばん印象の強い映画の一つです。
街はただ風景として撮られているだけのはずなのに、街全体が呪いの意思と死の空気感を漂わせている。
本作の舞台であるベネツィアはいずれ水の底に沈んでいく街と言われています。漂っている死の気配はロケ場所としてのベネツィアがそもそも持っているものなのかも知れない。こんな暗黒の風景が現実世界にあると思うとぞっとします。
街は「場所」であって被写体にはなりきってくれません。キャストだけでなく、カメラやスタッフも街に既に飲み込まれているので、作品全体が場の強烈な空気感に呪われてしまっており、死の臭いが立ち込めています。
「ベニスに死す」でもベネツィア(ベニス)自体が死んでゆく様子が描かれていましたね。そういうイメージを呼ぶ街なんだろうか。