1.人は、子供のときに、親から愛されることで、他人を愛する自信が生まれるそうです。 親から愛情を受けずに育った人の、他人の愛し方は、どこか、ぎこちなくて悲しい─。 これはそういう映画でした。 ちなみに「同性愛」はこの映画の本質ではないと思います。 彼女は、愛されたことがないゆえに、最後まで愛されるという自信が持てなかった。 彼女の愛情の飢えと不安は、しだいに「嫉妬」にかわっていくのは、ご存知のとおりです。 パイパー・ベラボーの素晴らしいところは、このトラウマを抱えた女の子を完璧に演じたことではないでしょうか? 愛されたいという願望や、愛してくれるだろうか?というトラウマから発した女の子の、身を焦がすような激しい焦燥感が、画面を通して伝わってきて、否が応でも、私の心を鷲摑みにして離しませんでした。 だけど彼女は、たった1人の人間を愛し続けたのだと思います。 それは未来のない絶望的な恋─。 彼女の行動は、終わりに近づくにつれ、荒々しさと、痛々しさを増していき、見ている者の胸に痛みを与えます。 彼女は、絶対に報われない恋愛の行く末を見ようとはせずに、目をつぶって全速力で、壁にぶつかっていく・・そういう少女でした。 母親からも愛されない彼女は、しだいに愛することよりも、愛されることに執着していきます。 パイパー・ベラボーは、絶望と狂気と、繊細さと、切なさの感情が同居する女の子を、見事に演じきりました。 これほど存在感のある女優は、それだけで観る価値はあります。 演技力に10点です