9.《ネタバレ》 売れないコメディアンと不治の病に侵された妻。
甲斐性なしの夫のために、陰で奔走する妻がいじらしい。
不器用でうまく愛情表現できず、憎まれ口を叩く二人。
ベタベタの話だが、すれ違いながらも互いを一番に思いやる気持ちに打たれる。
素直に観れば泣ける映画で、涙腺のゆるい人なら号泣必至。
ユーモアもあって、ほのぼのするところもあるので、暗く重苦しくはならない。
悪に徹しきれない2人組の詐欺師が、人助けするハメになるのが可笑しい。
細かい部分でのリアリティはなく、ドラマティックにするために予定調和的。
そこに引っかかるなら、話に入り込めないだろう。
この映画はリアリティをあえて無視している。
そこは確信犯で、だから病名さえも明らかにしないし、病院の手順や常識からも外れている。
それは、もっともらしく誤魔化そうとしてもかえってボロが出るからと開き直っているようにも見える。
だから、おとぎ話のように、あくまで「物語」として味わうのがいい。
例えば、演芸場には、笑うために行く客と、笑わせるものなら笑わせてみて、という客がいる。
この映画は、そういう意味では、泣きにいく人のための映画だ。