1. ワイラーが演出すれば犯罪サスペンスもココまでのハイレベルとなる!という格好のお手本が本作。原作はジョゼフ・ヘイズのベストセラーでシナリオもヘイズ自身の手による。先ずコノ脚本が秀逸だが、それでもワイラーのズバ抜けた演出力なくしてコレ程の傑作となったかは甚だ疑問だ。並みのカントクだったなら本作では語られるのみで姿も見せなかったボガート扮するグレン・グリフィンの情婦を登場させて水増ししたり、ボガートを煮え切らない中途半端な悪役にしたりしてそうで身の毛も弥立つ。流石ワイラー、グレンを徹頭徹尾”極悪人”として描き切るコトで、ボギーの持つ凄みをより一層増幅させている。また本作でもワイラー作品名物の”階段”は遺憾なく絶大な効果を発揮して見事!ダン役のフレドリック・マーチも天晴れな渋さで絶品の演技だった。「手に汗握るスリル&サスペンス」って煽り文句は本作やクルーゾーの「恐怖の報酬」、ワイルダーの「熱砂の秘密」レベルに至ってこそ相応しいと思って止まない。正に文句ナシの10点満点!!