4.どのシーンを切り取っても、視聴者をうならせる演技を堪能できます。
特に岩下志麻と桃井かおりの掛け合い、正に役者と役者の激突と言えるでしょう。
撮影現場では、二人の掛け合いを見て、スタッフはニヤニヤが止まらなかったでしょうね。
かたや、凛と背筋を伸ばし、真っ直ぐに相手を見据える弁護士。
かたや、猫背で猜疑心を籠らせた目つきの蓮っ葉な悪女。
プライベートでは、我が子に二度と会えない場面でも自分を崩さない岩下志麻。
裁判の不利を顧みず、心の中をむき出しにしてわめき散らす桃井かおり。
二人の対照をくっきりと浮だたせる証人役、三木のり平、山田五十鈴、名古屋章の芸達者な事よ。
監督の個性が前に出るのではなく、監督が役者という素材に無理に味付けをしていない、まさに役者という素材を楽しめる映画です。
それにしても、思い出しても球磨子に腹を立てている私は桃井かおりの演技と言う手のひらの上で転がされているのでしょうね。
10点満点です。