1.《ネタバレ》 製作から13年も経った今になってようやく鑑賞したのですが、「なぜこれをスルーしてきたんだ!」と後悔するほど心を奪われました。含蓄があり、笑わせ、そして燃える。私が映画に求めるもののほとんどが含まれた圧巻の80分でした(上映時間短っ!)。アリ社会を紹介する序盤、王女様との冒険とロマンスを描く中盤、将軍との戦いに雪崩れ込む終盤と3パートに分かれているのですが、どのパートも完璧な仕上がり。次々と舞台が移動するものの特に慌ただしさは感じさせず、すべてのパートが主人公Zの物語の構成要素として機能しているため映画全体には統一感があります。脚本の出来が恐ろしく良いのです。ハリウッドとは距離を置くウッディ・アレンによりにもよってアニメ映画の主人公役をオファーし(日本で言えば、田村正和にハゲヅラ被ってコントさせるぐらいのとんでもないキャスティング)、それを承諾させた脚本の力がこれです。サメとクマノミがお友達というふざけたディズニー映画とは一線を画す世界観。働きアリは仕事だけの人生に意義を求め、兵隊アリは隣国との間で死闘を繰り広げ、権力者はクーデターを画策する。戦場で出会った気の良い兵隊アリは世にも無残な死に方をし(小さいお友達が見れば確実にトラウマになります)、コメディリリーフと思われたアシナガバチは唐突に命を落とす。これは完全に大人向けの脚本です。アニメの枠を越えてしまったが為に一部では拒絶反応も起こっているようですが、映画としては非常に見ごたえがあります。。。世界一の映画監督スピルバーグをトップに迎え、「職業経営者から映画を取り戻す!」をスローガンに設立されたドリームワークス黎明期のラインナップは、それはそれは鼻息の荒いものでした。一般市民を巻き込みながらテロリストとアメリカ合衆国が死闘を繰り広げる「ピースメーカー」を皮切りに、スピルバーグのグログロ超大作「アミスタッド」「プライベート・ライアン」、子供を巻き込みながらオモチャが殺し合いをする「スモール・ソルジャーズ」、主要登場人物のほとんどが死ぬ「ディープ・インパクト」と、ネジのとんだ大作を連打します。そんな中で作られたのが本作なので、必然的に内容はダークでアダルトなものとなったようです。なお、本作の経験を経て娯楽性と毒のバランスをより洗練させたのが「シュレック」なのでした。