1.フル・セットの河岸の美術と照明が素晴らしい第一話「最後のクリスマス・イヴ」。
富者と貧者の残酷な対置があり、第四話の開放的なロケーションと対照する。
第二話「電気床磨き機」は悲劇と喜劇の融合の究極をいく。きれいに磨かれた床に滑って唐突に死んでしまう夫。生者と死者の語らいが対となり、寒色系を配された人工的な都会の姿もまた、第四話とコントラストになる。
ドレスを着たジャンヌ・モローがシャンソンを歌う第三話「愛が死に絶えるとき」。
ジャンヌ・モローの全身ショットから、顔へのクロース・アップへと移行し、またフル・ショットへと引いていく。
彼女の歌唱を一挙に捉える最もシンプルで最良のワンシーン=ワンカット。
そして、第一・第二話の「死」と対比される第四話「イヴトーの王様」には明るい自然光が溢れ、エロスというルノワール的な主題も浮かび上がらせながら「生」が賛歌される。
ルノワールの父オーギュストも愛した南仏ののどかな田園風景は『ピクニック』(1936)、『草の上の昼食』(1959)以来かわらぬ光と風と色彩でフェルナン・サルドゥーの絶望のみならず視聴者をも癒してくれる。
そして映画は、登場人物すべてが笑い出し、キャメラに向かって整列してお辞儀する、最も幸福で至高の大団円を迎える。
ルノワールが最後の作品で説いたのは、『トレランス』(寛容)だった。