9.2012年、年の瀬。たぶん、今年一番泣いた。
生命をまっとうした人物たちが、人生の讃歌を高らかに歌い上げるラストシーンに涙が止まらなかった。
こんなにも泣くつもりはなかった。「レ・ミゼラブル」という物語については、原作も読んだことがあるし、過去の映画化作品も観ていたので、描き出されるストーリー自体に感動こそすれ号泣などはすまいと思っていた。
実際、涙が止まらなかった直接的な理由は物語に対しての感動によるものではなかったと思う。
映画の持つ素晴らしさ、音楽の持つ素晴らしさ、芸術という表現そのものが持つ果てしなく大きな「力」に対して、感動し、むせび泣いてしまったという感じだった。
この物語に本質的な意味で“間違っている”人物は登場しない。
すべての人物は、ただただひたすらに“生きる”ということに執着しているだけだ。必死に生き抜こうとしている彼らを誰も否定することなど出来ない。
ただ、だからこそ人間同士はぶつかり合い、すれ違い、「人間」であるが故の悲喜劇が生まれる。
この物語が、時代と国を越えて愛され続けているのは、そういう人間そのものの本質的な葛藤とそれに伴う壮大なドラマが、決して色褪せるものではないからだと思う。
その色褪せない人間ドラマが、音楽、歌唱、映像、演技、それらすべてをひっくるめた「光と音」で彩られる。
スクリーンいっぱいに繰り広げられるその映画世界は、もはや奇蹟的で、神々しさすら感じた。
そんな映画にこれ以上言葉など必要ない。
今この時季にこのミュージカル映画を観られたことへの多幸感に対して、立ち上がって拍手を送りたくなった。
いつか必ず舞台版も観たい。