1.いやあ狂ってる。「サイアク」な映画だ。でもだからこそ「サイコー」過ぎる。
こんなにも悪趣味極まりなく、とっ散らかった馬鹿映画なのに、目柱が熱くなっている自分に笑ってしまった。
自分自身がこの映画を楽しめる「馬鹿」だということに、幸福感を覚えた。
事実や現実という言葉ばかりが重要視される世の中。「虚像」というレッテルを貼られたものは、社会から一方的に排除される。
偽ることは褒められたことではない。でも、本当に真実だけを見ることばかりが正しいのか。
つくられた世界を愛しては駄目なのか。
この世そのものが、“作り物”で埋め尽くされた地獄なんじゃないのか。
作り物でなぜ悪い?地獄でなぜ悪い?
もうそれは理屈じゃない。馬鹿と蔑まれようが、社会から排除されようが、その思いを貫き通したいすべての人々の、まるで怨念のように揺るがない信念だ。
その思いを「映画」という宝箱にぶち込み、撹拌し、無様な型で捻り出したこの映画を、愛さずになんていられない。
ミツコ(二階堂ふみ)の魔性と、平田(長谷川博己)の狂気を思い出しつつ、公次(星野源)の主題歌が延々とリフレインする。
しばらくはそういう日々が続きそうだ。