1.《ネタバレ》 私はこのシリーズをテレビで見た世代です。最初に見たのは小学生の頃、2作目に続けて見ました。当時は単純に楽しめましたが、中学生のときにあらためて見たときは複雑な気持ちでした。中学当時は宇宙戦艦ヤマトに端を発するアニメブーム真っ盛りで、特撮ものは校内で「幼稚なもの・見るに値しないもの」とこき下ろされていたのです。そのため、この3作目については「特撮シーンは良くできているのに、ドラマ部分の子供達の演技は、お世辞にも上手いとは言えないように思う。だから周りから馬鹿にされてしまうんだ」と悔しくて仕方ありませんでした。
30年以上経って、1作目・2作目と共に鑑賞したところ、当時とは印象が変わりました。子役さん達の演技は、さほど気になりませんでした。私自身が子供の親となり、すっかり親の目線で子供達の山越えに感情移入していたのです。「安全面には配慮していたのだろうが、危なげな山間での撮影は子役さん達にも酷だったのではないだろうか」と撮影エピソードにも想像を巡らせました。むしろ気になったのは、他の皆さん達もおっしゃる通り、荒川飛騨守の悪役としての設定についてです。1作目・2作目の領主と異なり、武人像を壊すどころか、魔神に言及する場面さえありません。鶴吉が身を捧げるときも「杉松と大作だけは許してあげて下さい」と祈っているのであって「悪い領主を懲らしめて下さい」とは言っていません。それなのに、宝剣で刺し貫かれてしまうほどの怒りを大魔神から向けられてしまう最後には少々同情してしまいました。敢えて言うなら、神の使いである鷹の射殺が逆鱗に触れたと言えなくはありませんが、あくまでその場での部下の判断であり、飛騨守の命令ではありませんし…。
特撮については、2作目で控えめだった実物大の手・足のアップによるアクションが復活し、火薬工場の設定を活かした派手な爆発シーンも増えました。一方、天災を魔神の行為として表現した冒頭のシーンにも迫力を感じました。もし、リメイクされるときが来たら?、この冒頭の表現も加え、驕れる悪者達をなぎ倒してくれたら…と思ったりしています。
さて、採点ですが、荒川飛騨守の設定に物足りなさを感じるものの、当時のスタッフの皆さん達の誠実な仕事ぶりは十分伝わってきました。3部作をまとめて日本特撮映画の古典的名作と位置づけ、大甘で10点を献上させていただきます。