3.《ネタバレ》 ナチズムと戦時体制における人間の狂気と退廃をさまざまなキャラクターを通して毒々しく描き出す。権謀術数の果てに繁栄を掴み取ったかに見えた「勇者」たちが、ふとした運命のいたずらであっけなく「地獄」に堕ちていく。そのひとつひとつの破滅の姿が美しく映えれば映えるほど、そこに人間の底なしの愚かさがさらけ出されるという、ヴィスコンティの美学が凝縮されている作品である。
事実上の主人公といってよい、ヘルムート・バーガー演じるマルチンの一貫した狂いっぷりが見事としかいいようがない。この、およそ天下国家などよりおのれの欲望にしか関心を向けない人間が権力を握ってしまうところにナチズムの恐怖と悲劇があったのではないか。