2.《ネタバレ》 …ここまでやってくれれば、何も言うことはないです。
コスタ・ガブラス、あんたはすごい。
気持ちの弱い人や落ち込んでいる人は見ないほうがいいと思いますが、サスペンスとしては最高の出来です。抑えた演出や編集がニクい。やっぱり社会派作品はこうでないと。
パパが秘書の黒人女性を「ジプシー」と最初から呼んでいることで、なんとなく「クロ」であることは予想がついてしまいまして、2人目の証人の様子でもって「写真を直視することもできないほど怖い」ということなどから、「クロ」であることは容易に観客には割れてしまいます。スカーのある男の件も、伏線が少ないので「たぶんそういうことだろう」とは想像できてしまいます。
するとそのあと、事実が判明したときに娘がどういう態度に出るのか、ということが主な関心事になります。私が想像していたのとは違う結末でしたが、もちろんこのほうがすっきりします。
それにしても、ミシュカという男の凄まじさ、前半生にやったことも鬼畜なら、後半生もそれに引けを取らぬ鬼畜ぶり。
…ミシュカは生まれ変わったつもりだったのです。まっとうに生きようとした。
だから、ミシュカであることの動かぬ証拠をつきつけられても、認めない。生まれ変わって、別人になったのだから。
けれど、昔の仲間に脅されて殺してしまい、なおかつ素性がバレて戦犯で起訴され、どこまでも「ミシュカ」が追ってくる。
追い詰められたミシュカの取った行動は、「家族に頼る」と「ミシュカを否定する」であって、そのエゴイズムはとても醜く露骨に描かれています。
そして、私がぞっとするのは、孫に自分の名前からとって「マイキー」とつけていることだ。この子の本名はおそらく「マイク」か「マイケル」でしょう。
鬼畜殺人男の名前をつけられてしまった孫。なんてことだ。
マイキー役はなんと、子役時代のルーカス・ハースだったのですね。今ではラリリ演技で活動中。