2.《ネタバレ》 この作品はとても不思議で、全く何のメッセージ性も考えず「ただただ可愛い!」ということに酔うだけでもいいし、隅の隅まで深読みし、穿った考え方をするのもいい。60年代のファッションやインテリアのデザインと色彩感覚は素晴らしく素敵だし、2人の女の子はとてもコケティッシュでキュート。それに加え、映像のコラージュ、唐突な光学処理、確固とした筋のないブツ切れのストーリーなどは、それだけ見ても前衛的で衝撃的。とにかく脱帽しても足りない程のハイセンス!究極の女の子映画!…それで完結してても充分だけれど、この作品の時代背景と辿った道を少しでも考えたなら、やっぱり何かがありそうだ。冒頭のシーンの忙しく画一的な動きをし続ける歯車はおそらく、当時のチェコの共産主義情勢の比喩であり、唐突に映る日光浴をする彼女達2人の自由な姿と対比させられる。彼女達はおそらく資本主義の象徴であり、作中に登場する、狭いトイレで小金を稼ぐのに必死で、彼女達の来訪を喜ぶ女性や、彼女達の姿が見えない自転車の黒服の花屋達などは、まさに資本主義に憧れる者や共産主義体制下で「自由」という概念すら見えない者の象徴だろう。しかし、ラスト付近ではそのパラドックスが起こる。美しく丁寧に料理された政党の為のご馳走を踏み付け、蹴散らす彼女達の姿。物言わぬ者を問答無用に潰す姿には、資本主義の暴走や戦争の姿を見る。そしてそうした者へもたらされる運命。因果応報のラストと、爆撃を背に、画面に打たれる監督のあのメッセージ。これを撮った後、監督のヴェラ・ヒティロヴァは7年間の活動停止を余儀なくされた。やっぱりこの作品は只者ではない。