2.《ネタバレ》 いい映画ですね。派手じゃないけど、とてもドラマティックでした。
みなさんが書かれているように、この作品は観る人によって解釈が変わってもいい映画なんだと思います。むしろ、その解釈の違いが面白いのではないでしょうか。若い人がこれを観て「いるよなこういうオヤジ、マジむかつく~、死んで当然じゃね?」と思うのもアリ。「12年の刑期を終えて出てきた男が息子と旅するフリして、昔埋めた宝を掘りにきた」って思うのもアリかな。「突然自分の人生に孤独を感じた男が、家族との絆を取り戻そうとした」のかもしれないし、「紛争地域から一時的に帰国した軍人が、息子たちに軍隊教育をしようとして嫌われた」のかもしれないし、キリスト教の神話やロシアの歴史をひっかけてるのかもしれない。
ちなみに私はこう観ました。おそらく12年服役していた父親。何故今更帰ってきたんだ!という問いには答えられない。ただ失った時間を取り戻すかのように、息子たちと旅に出る。父親にとっても12年の空白は大きく、息子たちへの愛情表現を遠慮している。父親は息子たちに生活の知恵と人間関係の知恵(縦社会)を教えようとするが、その命令口調が息子たちには高圧的に感じられる。母性で育った息子たちは父性に戸惑う。降って沸いたような父親を尊敬などできるわけがない。そして悲劇は起きる。次男はただ泣き、長男には父性の芽生えが起こる・・・。子供の頃って、優しさ以外の愛情には理解が及ばなくて、大人になってから振り返って、ああ今ならわかる、って思えるのが親の気持ちだったりする。この歳になって、この映画の父親の表情や言葉を追っていくと、とても切ない気持ちになります。(悪いけど私の死んだ父に比べたら、この映画の父の言動は真っ当だし優しいです)次男がこの後どんな風に育っていくのか気掛かりですが、自分を助けるために命を落としてしまった父親の記憶は、苦しいけれど有害なものではないんじゃないかと私は思うのです。箱の中身が何だったのかは結局わからないのだけど、父親が大切なものを取り戻しに来たのだという事だけは確実に私の胸に残りました。